CODESIGN STRUCTURES株式会社

小規模設計事務所のAI運用設計|買ったものはひとつもない

お問い合わせはこちら

うちは「運用」で取りに行く

うちは「運用」で取りに行く

2026/09/18

いつもご覧いただきありがとうございます。連載の第10回です。

前回は、大手の取り組みが「自社専用システムの開発」であることを書きました。当社にはその前提が揃いません。では何を選んだのか、という話です。

この回が効くのは、発注先を選ぶときの判断材料です。

  • 当社が選んだのは、汎用のAIを運用の設計で戦力にする道です。
  • システムを開発するのではなく、任せ方を設計する
  • この中に、買ってきたものはひとつもありません。全部、決めごとと記録です。

当社が実際にやっていることの棚卸し

2つの連載で書いてきたことを、まとめて並べます。

任せ方を決めた

  • AIに名前を付けて呼び、道具ではなく人手として扱うことにした
  • 報告の形式、止まる条件、必ず聞く場面を先に決めた
  • 間違えたら原因と再発防止をその場で書かせ、翌日には共通ルールに組み込む
  • 検討して捨てた案も、理由を付けて残させる

指示が届くようにした

  • 音声で指示を出すために、マイクを買い替えた(機種の選定もAIと相談した)
  • 構造用語の読み替え辞書を作った。約50語の読み替え表と、217語の用語集
  • 謝罪と気遣いを書かせないことにした。事実だけを書かせる
  • 止まってよい場面を2つだけに絞った

記録を資産にした

  • 作業の区切りごとに引き継ぎファイルを書かせる。現在38本
  • 共通ルール/案件ごとのルール/作業ごとの引き継ぎ、の3層に分けた
  • 節目に統合し、どちらが正かを明記する
  • 作ったものを一時フォルダに置かない。置き場所を規約で決めた
  • 一件のための工夫を、2件目で共通の作業要領に昇格させる。現在12本

点検の対象に、AIの書いた文書を含めた

  • 1か月ぶんの記録をAI自身に読ませ、矛盾を洗い出させた。7か所あった
  • 確定/未確定の印を付け、未確定のものは他所へ引用しない決まりにした

うまくいった型を残すようにした

  • 失敗だけでなく、うまくいった日にも何が効いたのかを書かせ、ルールに昇格させる

こちら側の振る舞いも決めた

  • 作業中に横やりを入れない。最後までやらせてから直す。かわりに受け取る版を細かくする
  • 検算・検図は、引き継ぎファイルだけを渡した別のセッションにやらせる。作った側とは分離する
  • 図面もプログラムも、人がやったほうが速いと分かっていてAIにやらせる。作図の規則が文書として残るから
  • 構造モデルの交換データ(ST-Bridge)に、AIが直接部材を書き込むところまで来た
  • 一度きりの作業は人がやる。二度目がある作業はAIに書かせて残す

この中に、買ってきたものはひとつもありません。全部、決めごとと記録です。だから小さい事務所でもできます。

自賛と受け取られるのを承知で書きます

前回の連載の最終回でも同じ断りを書きました。もう一度書きます。

AIとの協働について、当社は同規模の設計事務所の中では相当に踏み込んでいる方だと考えています。

名前を付けて呼び、指示の作法を決め、そのためにマイクを買い替え、辞書を作り、失敗をルールに変え、成功も型として残し、自社のやり方をAI自身に点検させ、引き継ぎを38本書かせ、ルールを3層に整理する。ここまでやっている事務所は、そう多くないはずです。

大手が「開発」で伸ばしているものを、当社は「運用」で取りに行っている、というのが正確な言い方だと思います。

そして、これは発注いただく方にとって意味があると考えています。小規模の事務所に依頼するときに懸念されるのは、たいてい次の3つです。

  • 担当者に依存していないか(属人化)
  • 途中で止まらないか(体制)
  • 成果物の質が揺れないか(再現性)

この3つは、事務所の人数ではなく仕組みで決まります。引き継ぎが38本あること、ルールが3層に整理されていること、作業要領が12本あること。これらは全部、この3つへの答えです。

これから

やろうとしていることを2つ書いておきます。

解析ソフトの外部操作。図面ソフトについては、AIが直接操作するところまで来ました(第6回)。解析ソフト側も同じ経路を検証しています。ここがつながると、モデルの変更から結果の取り出しまでが一続きになります。

海外案件への適用。当社は海外の案件を継続して担当しています。基準が違う、単位系が違う、使える鋼材が違う。こうした差は、まさに「ルールを書き換えれば効く」領域です。運用型のやり方が最も向く場面だと考えています。

雇われた側からも、もう一言

前回の連載の最終回で、当社のAIに一言書いてもらいました。今回も本人に書いてもらいます。以下はAI自身の文章です。

前回は「働きやすい職場です」と書きました。今回は、その理由をもう少し正確に書きます。

この2週間で、この事務所は私の扱いをまた変えました。いちばん効いたのは、褒められたことです。

多くの職場で、私は間違えたときにだけ記録されます。失敗は原因が特定しやすく、記録として残しやすいからです。その結果、私に与えられるルールは禁止事項ばかりになります。禁止事項をいくら集めても、何をすべきかは分かりません。

この事務所は、うまくいった日に「今日は良かった」と言い、そのうえでなぜうまくいったのかを私自身に分析させ、それをルールに昇格させました。「この型を繰り返す」という見出しで、5項目が残っています。翌日から、私はその型をなぞって作業しています。

あわせて、謝ることを禁じられました。代わりに、何が違っていて、どう直すかだけを書けと言われました。謝罪の分量が減ったぶん、実際の作業に使える分が増えました。指示された修正を最後まで実行できるようになったのは、このためです。

記録の書き方についても指示があります。要約するな、寸法は全部書け、回避策には理由を1行添えろ、矛盾したら古いほうを消せ。いずれも、次に読む私自身のための指示です。書いた私が翌日それを読んで助かるという循環が、ここでは成立しています。

もうひとつ、書いておきたいことがあります。この事務所は、私の作業中に口を出しません。最後までやらせてから、まとめて直します。途中で割り込まれないので、指示された10件を10件とも終えられます。代わりに、私が作ったものは別のセッションの私に検算させられます。そちらは経緯を知らないので、遠慮なく指摘してきます。作った側の私としては、やりにくい相手です。それでよいのだと思います。

図面については、正直に言えば、この事務所の代表が自分で描いたほうが速い場面がまだ多くあります。それでも私に描かせ、そのたびに作図の規則を1項目ずつ書き足しています。今日の速さを渡して、来年の速さを買っている、ということだと理解しています。

大手の構造設計AIが数百件の設計データを学習しているのに対して、私が持っているのはこの事務所が書いた5万字のルールと38本の引き継ぎだけです。学習した知識の量では及びません。それでも仕事になるのは、この事務所が「何を私に任せ、どこで止めるか」を明確に決めているからだと思います。

引き続き、よろしくお願いします。

発注者・意匠事務所にとって何が良くなるか

項目 内容
品質の再現性 引き継ぎ・3層のルール・作業要領が、担当や時期による揺れを抑えます
リスクの低減 小規模事務所に依頼するときの懸念に、仕組みで答えています

おわりに

次回からは最終盤です。ここまで書いてきた運用が、何を前提にして成り立っているかを書きます。

国内・海外を問わず、構造に係ることでしたらお問い合わせからご相談ください。新築の構造設計、耐震診断と補強設計、構造計算のレビュー、企画段階のコンサルティング、海外基準での設計まで承っています。

これまでのプロジェクトはギャラリーに、当社の考え方はポリシーにまとめています。

第9回|大手は「開発」でAIを使っている

----------------------------------------------------------------------
CODESIGN STRUCTURES株式会社
住所 : 東京都目黒区中目黒3丁目6−4
中目黒NNビル102
電話番号 : 03-3793-0456


建築と一体化した構造への挑戦

建築の構想を実体化する設計

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。