CODESIGN STRUCTURES株式会社

構造の企画検討を1日で|コストの見通しを早く立てる

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企画段階で、検討の「回数」を増やす

企画段階で、検討の「回数」を増やす

2026/08/17

いつもご覧いただきありがとうございます。連載の第2回です。今回は企画段階の話を書きます。

この回が効くのは、コストの予見性スケジュールの確実性です。とくに事業計画を立てる立場の方に向けた回になります。

  • 構造種別・架構形式の比較を、短時間で何案も回せるようになりました。
  • 早い段階で鋼材量やコンクリート量が出るので、概算コストと工期の見通しが立ちます。
  • 「あとで構造が入らないことが分かる」という、一番高くつく手戻りを企画段階で潰せます。

企画段階で何が起きていたか

判断の材料がないまま決めなければならない

企画設計の段階では、決めなければならないことが多い割に、判断の材料がありません。

  • 構造種別をどうするか。鉄骨造か、鉄筋コンクリート造か
  • スパンをどこまで飛ばせるか。柱を何本落とせるか
  • 階高はいくつ必要か。梁のせいはどのくらいになるか
  • 基礎は直接基礎で済むか、杭が必要か
  • それで、いくらかかるか

これらは相互に関係しています。スパンを飛ばせば梁が大きくなり、階高が上がります。階高が上がれば外装の面積が増え、コストが上がります。柱を減らせば1本あたりの荷重が増え、基礎が大きくなります。

ひとつを決めると他が動く。だから本来は、複数の組み合わせを並べて比べるべきです。

しかし、検討する時間がなかった

従来は、この段階で構造の検討を何案も回すことができませんでした。1案を検討するのに時間がかかるからです。

結果として、次のような順番になります。意匠側の案が固まる。そこで構造が入る。検討してみると成立しない、あるいはコストが合わない。意匠に戻って案を作り直す。

この手戻りが一番高くつきます。時間の損失だけでなく、そこまでに積み上げた検討がすべて無駄になるからです。関係者への説明もやり直しになります。

案を並べて比べる

やっていること

いまは、企画段階で複数の案を並べて比べています。

架構形式を変えたモデルをいくつか作ります。柱の位置、スパンの割り方、屋根の形式、ブレースの有無。それぞれについて解析し、部材断面を決め、鋼材量やコンクリート量まで出します。

ここまで出せば、概算コストが出ます。工事のしやすさから、おおよその工期の見当もつきます。

効くのは「案を捨てられること」

企画段階で一番効くのは、案を早く捨てられることです。

1案の検討に時間がかかると、案を絞ってから検討することになります。絞るときの判断は経験によります。経験は多くの場合正しいのですが、外れることもあります。外れたときに戻るコストが大きい。

いまは、絞る前に並べて比べられます。「なんとなく高そう」ではなく「この形なら概算でいくら」と言えると、話が動きます。

実例1|大空間の産業施設

ある産業施設の構造コンサルティングを担当したときの話です。

意匠側が持っていた大空間の構造イメージを、解析モデルにしました。柱の本数、屋根の架構形式、部材の寸法。そこまで決めて、概算コストを算出しました。

企画段階のご相談でしたが、コストの根拠を数字で示したことで、方針の決定が早く進みました。

大空間の建物では、屋根の架構形式でコストが大きく変わります。同じスパンでも、トラスにするか、梁を並べるか、面で持たせるかで鋼材量が変わります。企画段階でここを比べておくと、後の設計が楽になります。

実例2|屋根の形そのものが主題の案件

円形の屋根架構を示した構造解析モデル

円形の屋根架構を検討した案件では、形の検討と構造の検討を同時に回しました。

架構形式が意匠の主題になる建物では、この2つを分けて進めることができません。「形を決めてから構造を考える」ができないからです。形と構造が同じものだからです。

形を変えるたびに構造を検討し直す。その回数を増やせたことで、意匠側が形を粘れるようになりました。

こうした案件では、検討の回数がそのまま完成度に直結します。回数を増やせることの価値が、一番はっきり出る場面です。

実例3|概算数量だけを受託する

高層の事務所ビル計画で、構造の概算数量算出だけを受託したことがあります。

設計そのものはまだ始まっていない段階です。事業として成立するかを判断するために、構造にいくらかかるかを知りたい。そういうご相談でした。

この種の需要は実際にあります。設計契約の前に、数量だけを知りたい。当社では、この段階からのご相談も承っています。

実例4|地盤調査がまだ行われていない敷地

基礎はコストの幅が大きい

基礎の形式が決まらないと、コストの幅が大きく残ります。直接基礎で済むのか、杭が必要なのか。杭が必要なら、支持層はどのくらいの深さにあるのか。ここでコストは大きく変わります。

ただ、企画段階では地盤調査がまだ行われていないことが普通です。調査には費用と時間がかかるため、事業として進めるかどうかが決まる前には実施しにくいからです。

公開されている地盤データを使う

そこで、公開されている近隣の地盤データを使いました。

自治体が地盤の調査記録を公開していることがあります。地図上で位置を指定すると、その付近で過去に行われた調査の記録を見ることができます。

ある案件では、敷地から半径600m以内にある54か所の調査記録を集めました。それを敷地からの距離順に並べ、近い順に8か所を選んで整理しました。それぞれについて、地層の構成、各層の厚さ、支持層と考えられる層の深さ、地盤の強さを示す数値を並べました。

この8か所を見比べると、その一帯の地層の傾向が見えてきます。支持層がどのくらいの深さにあるか、その深さが場所によってどのくらいばらつくか。ここまで分かれば、基礎形式の当たりはつけられます。

調査の代わりにはならない

念のため書いておきます。これは地盤調査の代わりにはなりません。

公開されているデータは、あくまで近隣の記録です。敷地そのもののデータではありません。数十メートル離れれば地層が変わることは珍しくありません。設計にあたっては、必ず敷地での調査が必要です。

それでも、調査前に方向性を決めるための材料にはなります。「杭が要りそうだ」「支持層は20メートル前後だろう」という見当がつけば、概算の精度が上がります。事業の判断が早くできます。

基礎は、企画段階の金額を一番動かす

企画段階でコストの幅が最も大きく残るのが、基礎です。

地盤が良ければ、建物の重さを地盤に直接伝える基礎で済みます。地盤が悪ければ、深いところにある固い層まで杭を打つことになります。この差は、建物によっては工事費の1割前後を動かします。

しかも基礎は、後から変えにくい部分です。杭が必要と分かったのが設計の後半だと、基礎の形が変わり、それに伴って地下の梁が変わり、場合によっては建物の重さの想定まで見直しになります。

それでも判断材料が少ない

厄介なのは、企画段階では地盤の情報が最も乏しいことです。地盤調査には費用も時間もかかるため、事業として進めるかどうかが決まる前には実施しにくい。

つまり、一番コストを動かす要素について、一番情報がない状態で判断を求められることになります。

だからこそ、公開されている近隣の調査記録を集めて傾向を掴む作業に意味があります。前述のとおり、ある案件では半径600m以内の54か所を集め、近い順に8か所を整理しました。

杭になった場合に効くこと

杭が必要と分かった場合でも、条件を早く掴めれば打てる手があります。

  • 柱の配置を見直して、杭の本数を減らせないか
  • 荷重の大きい柱を分散させて、大径の杭を避けられないか
  • 建物の重さそのものを軽くできないか(構造種別の選択に戻ります)

いずれも企画段階でしかできない検討です。設計が進んでからでは、柱の位置は動かせません。

いつ相談すればよいか

早すぎることはない

よくいただく質問に「どの段階で構造設計者に相談すればよいか」があります。

答えは「早いほどよい」です。ボリュームスタディの段階、極端に言えば敷地を検討している段階からご相談いただいて構いません。

この段階でお伝えできることがあります。

  • その階数・その用途なら、構造種別の選択肢はどれとどれか
  • そのスパンを飛ばすと、梁のせいがどのくらいになるか
  • その結果、階高がいくつ必要になるか
  • その地域の地盤なら、杭が必要になる可能性が高いかどうか

いずれも精度の高い数字ではありません。ただ、この段階で方向性が分かっていると、後の検討が楽になります。

階高は後戻りしにくい

企画段階で決めたことのうち、後から変えにくいものがあります。代表が階高です。

階高は、天井の高さ、梁のせい、設備の配管スペースの合計で決まります。梁のせいは、スパンと荷重で決まります。つまり、スパンの決め方が階高を決め、階高が建物の総高さを決めます。

総高さは、日照や高さ制限、外装の面積、エレベーターの仕様に効いてきます。設計が進んでから階高を変えると、影響が広範囲に及びます。

だから企画段階で、スパンと梁せいと階高の関係を一度確認しておく価値があります。この確認は、案を並べて比べれば1日で終わります。

概算には幅がある

企画段階で出す概算には幅があります。これは正直に申し上げています。

地盤調査が終わっていない、設備の計画が固まっていない、仕上げが決まっていない。前提が定まらないうちは、幅を持たせるしかありません。

重要なのは、幅がどこから来ているかを示すことだと考えています。「基礎が直接基礎か杭かで、この金額が変わります」「スパンをこう割れば、この分下がります」。幅の理由が分かれば、次に何を確かめるべきかが決まります。

金額を1つだけ出して、その根拠を示さないことの方が問題です。

海外案件の場合

海外の案件では、企画段階の検討がより重要になります。

使える鋼材の規格が違います。日本で標準的に流通している断面が、現地では手に入らないことがあります。施工の方法も違います。現場で溶接できる範囲、工場で加工できる範囲が国によって違います。

これらは構造形式の選択に直結します。企画段階でここを確認せずに進めると、実施設計の段階で作り直しになります。

当社では、複数の国で構造設計や構造コンサルティングを担当してきました。ある国では建築基準そのものを策定する業務も担当しています。現地の条件を織り込んだ企画段階の検討も承っています。

発注者にとって何が良くなるか

コストの予見性 企画段階で概算数量が出ます。事業の判断を早い時期にできます
スケジュールの確実性 設計が進んでからの「構造が入らない」を防ぎます。手戻りが減ります

当社のAI活用|案を「捨てる基準」は経験からしか出ない

各回の終わりに、当社のAIの使い方を書いています。第2回は、企画段階の回にふさわしい話を。

AIは案を出せる。捨てられない

この回で書いてきた「複数案を並べて比べる」は、AIが最も力を発揮する場面です。条件を変えたモデルを何本も作り、解析し、数量を出す。ここは人がやるより圧倒的に速い。

ただし、出てきた案のどれを残し、どれを捨てるかは、AIには決められません。

理由は単純です。捨てる基準の多くが、数値になっていないからです。

  • この形は、施工者が嫌がる
  • この納まりは、現場で必ず問題になる
  • この案は、意匠側が本当にやりたいことから外れている
  • この数量は、この地域の相場からすると出ない
  • この工法は、この規模の工事では採用されにくい

いずれも解析結果には現れません。過去に同じことをやって、うまくいかなかった経験からしか出てきません。

実績の幅が、指示の幅になる

当社が企画段階の検討を短時間で回せるのは、AIが速いからだけではありません。比較すべき案を最初から絞り込めるからです。

代表は組織設計事務所で30年、構造設計に携わってきました。病院、大学、官庁施設、スポーツ施設、空港施設。当社を設立してからは、免震の高層集合住宅、工場、福祉施設、複合施設に加え、海外では空港ターミナル、鉄道駅、橋梁の付帯施設、気象観測施設まで担当しています。

用途も規模も国も違いますが、だからこそ「この条件ならこの構造形式が候補になる」という引き出しの数が増えます。

この引き出しが、そのままAIへの指示になります。「この3案を比べて」と言えるかどうか。ここで的外れな3案を指定すれば、どれだけ速く解析しても意味がありません。

実際の指示の出し方

企画段階の検討では、当社は次のような形で指示を出しています。

  1. 比較する案を、こちらから指定する。「案を出して」とは言いません
  2. 比較の軸を先に決める。鋼材量、階高、基礎の規模、施工の難易度のどれで比べるか
  3. 報告の形式を指定する。案ごとに同じ項目が同じ順で並ぶようにする
  4. 想定と大きく違う結果は、必ず指摘させる。「数量が想定の半分になった」なら、まずモデルを疑います

4番目が重要です。AIは、間違った結果でも同じ自信で報告してきます。だから「おかしいと思ったら言え」ではなく、「この範囲を外れたら必ず言え」と数値で線を引いておきます。

「なんとなく高そう」を数字にするために

この回の冒頭に「なんとなく高そう、ではなく、この形なら概算でいくら、と言えると話が動く」と書きました。

これを短時間でやるには、経験で候補を絞る力と、絞った候補を高速で回す力の両方が要ります。片方だけでは足りません。経験だけでは検討の回数が増えず、道具だけでは的外れな案を大量に検討することになります。

当社は、この2つを組み合わせることに時間を使ってきました。企画段階の相談で早く答えが出せるのは、その結果です。

用語について

海外の読者の方に向けて補足します。

構造種別とは、建物の骨組を何で造るかの分類です。日本では主に次の3つが使われます。

  • 鉄骨造(S造):鋼材で骨組を造ります。軽く、大きなスパンを飛ばせます
  • 鉄筋コンクリート造(RC造):鉄筋を入れたコンクリートで造ります。重いですが、遮音性や耐火性に優れます
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造):両方を組み合わせます。日本で発達した構法です

どれを選ぶかで、コスト、工期、使える空間の大きさ、遮音性能が変わります。企画段階で比較する価値があるのは、この選択が後戻りしにくいからです。

おわりに

次回は、意匠の変更に構造がどう追従しているかを書きます。意匠事務所の方に向けた回になります。

企画段階でのご相談、概算数量の算出のみのご依頼も承っています。お問い合わせからご連絡ください。これまでのプロジェクトはギャラリーに、設計の進め方は技術のページにまとめています。

第1回|構造設計は、もっと早く・もっと確かにできる

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建築と一体化した構造への挑戦

建築の構想を実体化する設計

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